ヤマハのエンジン技術の粋を凝縮

エンジンは、これまでに培ってきたYZF-R1の技術をベースにした997cm³・水冷・4ストローク・DOHC・4バルブ。軽量、コンパクト化、高信頼性の確保に重点を置き新設計された。シリンダーボディには、ライナーレスにすることで放熱性と剛性バランスを確保できるセラミックコンポジットメッキシリンダーを採用。また、冷却水の通路がシリンダー側からヘッド側に貫通しないクローズドデッキ構造としている。加えてショートシリンダーという新技術を採用。これはシリンダーブロックをクランクケース側に潜り込ませるもので、シリンダー自体の長さは変えずにシリンダーブロックを短くしている。こうすることでスタッドボルトの長さを短縮化。締結強度を上げ剛性を高めるとともに軽量化にも貢献している。さらに、鍛造ピストン、破断分割式(FS)浸炭コンロッドといったエンジンパーツを採用。こうした技術を集積することで、これまでのヤマハのリッタースーパースポーツエンジンとしての最大ボア78.0mmを実現し、12.7:1の高圧縮比を可能にした。一方、急なシフトダウンにおいても良好なグリップを維持してマシンの挙動を安定させるために、スリッパークラッチを採用した。
クロスプレーン型クランクシャフトエンジンのサウンド

エキゾーストは、効果的な排気脈動を得るために、1・4番、2・3番を集合させた4-2-1-2タイプとし、2本出しのショートタイプアップサイレンサーを採用した。そこから発せられるエキゾーストサウンドは、このエンジンの存在を聴覚に訴求する。クロスプレーン型クランクシャフトエンジンの不等間隔爆発の排気音を周波数分析すると、周波数のバランスに偏りがあり、低周波と高周波が混在した独自の音を奏でる。それは走行中のライダーには、YZR-M1と同質の力強い独自のサウンドとなって感じられる。
クロスプレーン型クランクの特性を引き出す電子制御技術

ニューYZF-R1には、電子制御技術思想G.E.N.I.C.H.
※による電子デバイスを搭載。吸気系ではYCC-T(ヤマハ電子制御スロットル)、YCC-I(ヤマハ電子制御インテーク)、FIにはメインインジェクターに加え中高速域から噴射が行われるセカンダリーインジェクターなどを装備し、気筒別、ギア別に燃料、空気量制御を行っている。また、排気系では排気デバイスEXUPが採用されている。YCC-Tは、ライダーのスロットルグリップ操作をセンサーで検出し、それに加えてエンジン回転や水温など各種センサーの信号をECUにて演算し、最適な空気量となるように、サーボモーターでスロットルバルブを駆動。このサイクルをわずか1,000分の数秒という高速で制御するシステムである。これにより、特に低中回転域など、エンジンが要求する最適な吸入空気量となるようにスロットルバルブを制御し、オーバーベンチュリーと呼ばれる吸入速度の低下による空気量の低下・性能低下を防いだり、逆に低いギアやトルクの山谷が残る領域では、要求よりもさらに閉じることにより、理想的なトルク特性の実現を可能としている。YCC-Iは電子制御によりファンネル長を2段階に切り替えるシステムで、9,400r/min以下はロングファンネル、それ以上の回転域になるとファンネルの上部が切り離されショートファンネルとなる。通常だと出力特性は、中低回転域と高回転域いずれかを重視してセッティングしなければならないが、このシステムはその二律背反を打開している。
※ G.E.N.I.C.H. (ジェニック):アナログでは達成できない領域を電子制御によって補完し、人間の感性になじむ性能をより高次元にもとめるというもの。
状況に応じてエンジン特性を切り替えられるD-MODE

D-MODEはYCC-Tの開度マップを切り替えるシステム。パワーそのものを変えるのではなく、エンジン出力特性を3通りに変更することを可能にした。ニューYZF-R1のポテンシャルをベストな状態で引き出せるSTDモードに対して、Aモードはよりスポーティなエンジンレスポンスを低中速領域で楽しめるモード。BモードはSTDモードに対して、穏やかで扱いやすい出力特性を発揮。市街地、ツーリングなどの際に、コース、路面、ライダーの体調など様々な走行コンディションの変化により柔軟に対応することで、マシンとの対話の幅を広げることができる。